原点回帰
技術・人・経営が工務店の原点
2006年は構造強度偽装事件やパロマ工業の中毒事件など、企業そしてつくり手としての社会的責任と本質を問われた1年だった。
それを受けて本紙では、2007年を「原点回帰」の1年と位置づけたい。
工務店の原点とは何か。
そのひとつは「技術」であろう。
では「技術」とはなにか。
辞書をひくと「物事を巧みにしとげるわざ。技芸」「自然に人為を加えて人間の生活に役立てるようにする手段」とある。
工務店が目指すべき技術は、後者の「人間の生活に役立てるようにする手段」だろう。
法隆寺・薬師寺の棟梁で宮大工の西岡常一氏は、祖父から伝えられた口伝のひとつとしてこんな言葉を紹介している。
「住む人の心を離れ住居なし」
そしてこう解説する。
「建築しようという人の心を離れて、建物をつくってはいかんということですな。住む人の心を組み入れたもんじゃないと、家とはいえんとこういうことです」(「木に学べ」小学館から)。
技術を高めるということは、人の生活を知ること、人の心を知ることでもあるということだ。
本紙では今年1年をかけて、技術とその生かし方について、この観点から考えていく。
西岡棟梁が紹介した口伝の中でも特に知られるのは
「木組は木の癖組」
「木の癖組は人の心組」
の二つだろう。
後者について西岡棟梁は「50人の大工がおったら50人の人に、わたしの考えをわかってもらわないかんちゅうことや。これが工人の人組みですわ」と言い、続けて
「工人の心組は工人への思いやり」
という口伝を紹介している。
建物は棟梁1人でつくれるものではない。
思いやりの心を持って工人たちをひとつにまとめていくことが木を組むうえで不可欠だということで、この姿勢はそのまま現代の工務店経営にもスライドできるはずだ。
「技術」と「人」、そして「人」を動かしまとめる「経営」は不可分のものであり、「人」「経営」も工務店の原点のひとつだと考えることができる。
本紙では、「人」「経営」について、特に「技術」の担い手である職人の確保・育成について、また技術を強みする「技術経営(ものづくり経営)」について1年を通じて考えていく。
またこうした原点から考えてみる作業を通じて、工務店とは何か、その価値とは何か、という昨年提起した命題にも答えを出していきたい。
この特集号では、そのイントロダクションとして、技術・人・経営をテーマに読者アンケートを行い、その現状を整理した。
[新建ハウジング1月10日号第1部1面]
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