住宅専門紙「新建ハウジング」の発行人(社長)が、
住宅ビジネスのヒント・トピックをつづります。


2010年11月22日

”木の家”耐震改修推進会議

神戸の監察医の調査によれば、阪神淡路大震災における神戸市の死亡者の92%は、地震直後14分間に生じた建物倒壊による、圧死・窒息死などでした。

防災対策でイメージされるものは何でしょうか? 
頭に浮かぶのは、水と乾パンなど非常食や防災グッズ、それから救助隊(自衛隊・消防隊)、救助犬etc・・・。

しかし、監察医が調査した結果、阪神淡路大震災における神戸市内の死亡者の92%は、地震直後の14分間に自宅で亡くなっています。

この事実は、大地震の防災対策が、先ず何をおいても、建物の倒壊を防ぐ、住宅の耐震化にあることを教えていないでしょうか?

これは、今年設立された「”木の家”耐震改修推進会議」のウェブサイトから抜粋した「14分間の真実」に関する問題提起です。

この「14分間の真実」を、建築業界人は知っているようで知らない。もしくは忘れている。耐震化についても、スル―してしまう。そんな空気を感じますし、僕自身、耐震については割と取り上げてきたようでも、本腰を入れて取材をした経験は数えるくらいです。


この推進会議の発会式の基調講演で、東京大学の目黒教授が、「耐震化が進まないのは、想像力が欠如しているからだ」と看破されていましたが、僕を含めそうなんだと思います。「14分間の真実」から想像できることはいくつもある。特に、住まいの、建築のプロフェッショナルとして、いま何ができるか。メディアとして、いま―。


この推進会議が来年2011年の1月17日、阪神淡路大震災から16年目のこの日に、神戸で「大勉強会」と題したイベントを開催することになりました。

「耐震化加速元年へ」という菅総理のメッセージで幕を開け、地震活動の現状報告から耐震改修事例・木の家改修事例の発表、耐震化加速に向けたパネルディスカッションなど、1日で地震×耐震化×木の家改修の最新の知見が学べるプログラムとなっています(僕もパネルディスカッションの司会として参加します)。

参加者700人という文字通りの「大勉強会」で、これほどの規模で耐震について考えるイベントは記憶にありません。このインパクトが、多くの人の想像力を刺激し、「アクション」につながればいいな、と思います。

■「大勉強会」のプログラム→こちらから
■「大勉強会」の参加詳細→こちらから

大勉強会.JPG



※上の写真は地震のシンボル「鯰」をあしらったインパクトのある「大勉強会」のポスターです。
※新建ハウジングはこの阪神淡路大震災の年に発刊しました。創刊号のトップ記事は震災関連で「木造の強さ」を逆にアピールするものでした。
※僕が新建新聞社に入社したのもこの年でした。社会人としての初仕事は神戸でのボランティア活動。少し因果を感じています。


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2010年11月10日

コストパフォーマンス競争に行くしかないのか

成熟社会の消費は「本来」、「たしかな消費」だと考えています。自分の価値観に合う「たしかなもの」を吟味して選び、手入れをしながら長く愛着をもって使うことで、暮らしを豊かに楽しくする。これが「たしかな消費」です。そのなかで、吟味にかなうプレミアムなモノが支持されていく。

ただ、すべてのモノをこのような物差しで選ぶことは難しい。こだわるモノについてはこうした「たしかな消費」を行い、そうこだわっていないモノについてはコストパフォーマンスで選ぶ、それがすでに一定のモノ的豊かさを実現している日本における消費スタイルだろうと思っています。

もっと言えば、「安物買いの銭失い」と言う言葉があるように、以前からこんな価値観、消費スタイルが、厚みのあった日本の「中流」に根付いていたのです。デパートはその需要に応えることで成長をとげました。


ただ、経済状況や将来不安から「中流」意識が失われた今、そうしたいとは思っていても、なかなか「たしかな消費」にいけない、プレミアム品に手が伸びない、というのが日本の消費の現実です(デパートも不振にあえいでいますね)。

住宅市場も同じです。

新建ハウジングでは住まい手の意識調査を継続的に行っていて、最近は運営している「工務店ブログ広場」に登録いただいた住まい手ブロガーさんにもアンケートやヒアリングをお願いしています。

それらを見ると、住宅取得層の若年化と住宅予算の低下もあり、「たしかな消費」よりも「コストパフォーマンス」を重視する傾向が見えますし、コストパフォーマンスを高めるほど「売れる」という意識が、住宅産業でも主流になっています。

長期優良住宅も、本来は「たしかな消費」をバックアップする制度のはずですが(国は「ストック型社会への転換」という言葉使いをしています)、結局新築需要促進の補助金の受け皿ツールとして使われたため、補助金が終われば認定需要はしぼむ可能性が、「このままでは」高い。


ただ、「たしかな消費」を実践する消費者は、費やす金額は低下しているにしてもまだ確実に存在します。また、提案次第で「たしかな消費」に目覚める消費者も一定いるはずです。

実際工務店でも、この価値観に応えること=「たしかな家」「たしかな家づくり」で「たしかな暮らし」を提案することで、プレミアムな価格にも関わらず行列ができているところがいくつもあります。

逆に言えば、資金的に余裕のある「中流」層に、「たしかな家づくり」を歯を食いしばってでも説き、「いい家」を建ててもらうことができなければ、コストパフォーマンス競争にいくしかない。ここは選択を迫られるところです(プレミアム市場と低コスト市場の二兎を追った会社は、たいてい失敗しています)。

もうひとつ、中古住宅+リノベーションによって、よりリーズナブルに「たしかな暮らし」を提案する、という手がありますが、それについては改めて書きたいと思います。
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2010年11月01日

急成長した住宅会社はなぜ(ほぼ)必ずピンチに陥るのか〜「増収減信」のワナ

急成長した住宅会社は、ほぼ必ずピンチを迎えます。


理由はいろいろありますが、一番大きいのは「急成長に身体がついていかないから」です。受注はとれても、それをきちんとつくり守っていく量・質のマンパワーに欠けている。

その結果、工期が遅れるばかりか設計施工・顧客対応の質も下がり、顧客満足の低下につながります。家守り(いえまもり:アフターケア)にも手が回らなくなりますから、これも満足の低下と顧客の離反を招きます。

つまりは、「身の丈を超えて」量・収益を目指した結果、企業にとって一番大事な「信頼・信用」(評判)を失ってしまうということです。

その状態をここでは「増収減信」(ぞうしゅうげんしん)と呼びたいと思います。信=信頼・信用です。


「増収減信」状態が続いた企業は、内部からも外部からも支持を失い、それは収益にも影響。「減収減信」のスパイラルに入っていきます。

評判を傷つけるバッドニュース・悪いクチコミが簡単に流通する現在では、なおさら速くこのスパイラルに巻き込まれていきます。


企業が目指すべき姿は「増収増信」で、身の丈に合った成長を続けるなかで着実に信頼・信用・評判を積み重ねていくことです。

そのうえでもっとも重要なポイントとなるのが「人」と「しくみ」で、このふたつの充実を図り、仕事と家守りの質を高め、成長する余力ができたら受注量を増やす、そんな身の丈に合ったスローな成長が、今の時代と工務店に合った持続経営の基本だと考えています。
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2010年10月29日

うしろめたい仕事はしない

以前取材した方の言葉で耳に残っているものがあります。最後にぼつりと洩らされた「うしろめたい仕事はもう嫌なんです」。風の便りで、その後その方は勤めていた某大手を退職されたと聞きました。

最近、若手経営者・次世代経営者と話していても、うしろめたい仕事はしたくない、という「良心」を強く感じます。

ただ、ともするとここは経済に負けてしまう部分でもあります。そう考えると、ここは最小の良心のように見えて、最大の良心なのかもしれません。


自分にとって、自社にとって、うしろめたい仕事とはどんな仕事なのか。やりたくない・やらないことはなのか。

ドラッカーは「知りながら害をなすな」と言いました。プロフェッショナルとしてこれは良くないことだと知りながら、経済などに負けて流されてしまう。それではプロフェッショナルとは呼べないよ、真摯さの基本はここにある、と説きました。


どんな仕事をやりたくないのか、やらないのか。表明し、約束し、徹底する。高飛車なようだけれど、こうでもしないと、住宅予算が加速的に低下するなかで、うしろめたくない仕事をするのは難しくなってきているように思います。

また逆に、こうした「態度」を表明することが、人として、企業としての「信頼」につながると思っています。「態度」は「価値観」の表れで、それこそが「アイデンティティー」です。それに好感をもった人が、人を、企業を信頼をする。


自分の態度を表明しない、個性の見えない人に、好感も信頼も感じようがないと思います。印象に残らないのでスルーしてしまう。企業の場合、ここでスルーされると、あとは「安さ」で気を引くしかありません。

モノに対する信頼は、人や企業に対する信頼があって得られるものです(その信頼獲得プロセスを大幅にショートカットできるのが「ブランド」です)。たとえ同じモノでも、人は好感・信頼できる人から買おうとします。


つまりは、アイデンティティーを大事にし、価値観を態度として表明し、約束し、やり抜くことが、それに好感・信頼してくれる価値観が近い顧客を集めることにつながり、うしろめたく仕事ができる、つまりは楽しく仕事ができる。良心と経済を両立できる。

そんなふうに考えています(僕もまだ道半ばですが)。
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2010年10月17日

「全国健康住宅サミット 沖縄大会」が開催されます。

11月の25日、26日、沖縄で「全国健康住宅サミット」が開催されます。伊礼智さん(伊礼智設計室)が基調講演します(僕も少しお話します)。以下のような案内記事を書きました。いいプログラムだと思いますので、是非ご参加ください(僕もメンバーの推薦などで少しだけお手伝いしました)。

全国健康住宅サミットは、山本里見氏(東北住環境研究室代表)を会長に、「安心、安全、やすらぎを与える住宅を提供するために、つくり手が手を取り合い、お互いに研鑽し合う場をつくる」という趣旨のもと、これまで11回開催してきた。

趣旨に賛同する工務店や住宅関連事業者が毎年持ち回りで地域に実行委員会を立ち上げ運営を担うスタイル。第10回は岩手、第11回は山形で開催され、工務店を中心に300人超が参加した。

12回目となる今回は、第1回の開催地・沖縄に帰り「勝ち残る決意、残っているか〜いま、工務店に求められる理念と行動指針〜」をテーマに開催する。

実行委員長は比嘉武・沖縄木造住宅共同組合代表理事。沖縄木造住宅共同組合の轄K健ホーム、虚ス田建設、居Z太郎ホーム、鰍s&Tとその協力業者が実行委員をつとめる。


プログラムは今回のテーマ「勝ち残り」「理念」に基づいて構成。

特に午後の分科会は「工務店の生き残る道。信念か模索か」「変革期を乗り切る!その秘策は?」「生き残りをかけた工務店自らのネットワーク」の3 つの分科会に分かれ、工務店の「勝ち残り」「理念」についてパネルディスカッション形式で議論する。

分科会には全国から行列のできる工務店、小さくともきらりと光る工務店が参加。また午前の分科会にはシンケン(鹿児島市)の迫英徳氏も登壇する。


参加費は1人1万8000円(大会費・懇親会費)。宿泊費込の場合は2万6500円〜。
現在参加者を募集中だ。

あわせて当日会場での展示・デモの出展企業当日配布するプログラムの広告出稿企業も募集し
ている。

参加申し込み・資料請求は
TEL098・867・5745、FAX098・867・0776
Eメール:info@okinawamokuzou.jp


沖縄サミット.JPG
















僕は分科会のコーディネーターも務めさせていただきます。

人生初沖縄。お世話になっている方も出席されるので、沖縄を堪能しようと思います(サミットもがんばります)
posted by miura at 12:07| Comment(2) | TrackBack(0) | 住宅ビジネスのヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月09日

らせんの法則

昔、師の一人に「らせんで考えろ」と教わりました。

世の中はらせん状に進化している。技術や価値観の変化によって、一度裏側に隠れていたものが復権する。でもそのとき、以前と同じ高さではなく、らせん階段を上がるかのように一段高くなって表に現れる。といった話でした。

「温故創新」ということかな、と理解しましたが、最近そうだよな、と思うことがたくさんあります。


たとえば「家守り」(いえまもり)もそうです。昔は出入りの職人がいましたが、経済成長とビジネスモデルの変化のなかで、アフターをしっかりするつくり手は少数派になってしまった。でも、いまウェブやデータベースをはじめ最新の技術を使いこなせば、最小の手間で家守りができるようになり、その徹底ぶりがウェブでクチコミされていく時代です。


ちょっと前の話で言えば自然素材がそうで、工業化・産業化の中でいったんは裏に隠れた自然素材が、健康・環境志向を追い風に、でも機能性や施工性を高めて再登場し、また主流になってきています。


こうした温故創進の視点で見てみると、まだ最新の技術や感性で復権させられそうなものがあることに気付きます。前のめりで探すより、日本の昔を振り返り、それを予想もつかない方法で復権させる。そこにチャンスはあると思っています。
posted by miura at 20:12| Comment(2) | TrackBack(0) | 住宅ビジネスのヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月04日

「なぜ頑張る必要があるのか」という問いにどう答えるか

社会に出て会社に入ったころは、何も考えず働いてました。ただ、配属された不動産雑誌・広告の営業職のとき、あまりにも広告が取れずに責められたので、どうしたら広告が取れるかを考えて動くようになりました。

その結果、他よりも先に開発や分譲の計画をつかんで他より先に提案する、その時に業界情報やお役立ち情報も一緒にお届けする、というシンプルな手法を見つけました。

これだけで受注をいただけるようになりましたが、あくまでも自分の成績をあげたいというのが頑張る動機で、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。


次に、新建ハウジングの記者になりましたが、このときも同僚や他社に負けたくないというのが頑張る動機でした。その一点で全国駆け回りましたが、ふと気がつくと、売上げに責任をもつ立場となり、後輩ができ、悩みを聞くようになりました。そんなとき、「頑張る必要があるのか」という問いにどう答えたらいいのか、言葉につまるようになりました。

人は、自分のエゴのためだけに、売上げのためだけに頑張れない、ということにようやく気付きました。ドラッカーを繰り返し読むようになったのはこのころです。


ドラッカーを読んだときに体中に衝撃が、ということは正直ありませんでした。難しかったということもありますが、僕の中にリーダーとしての自覚がなかったので、気付きの大半をスルーしていたのだと思います。

ですが、何度も繰り返し読むうちに、じわじわと、それも自分の成長と自覚に合わせて、ドラッカーの言葉が身体に染み込むようになっていきました。

最初に考えたのは、メディアとして何をすべきか、メディアとしての使命についてです。顧客や社会への貢献についても考えるようになりました。そのなかで「変えよう!ニッポンの家づくり」というミッションをまとめました。

「伝える」ことを通じて読者が「いい家」を提供できるようになり、また「いい経営」をできるようになる。その結果、業界が良くなるだけでなく、ハッピーな住まい手が増える。それがメディアとして僕たちができる貢献だし、責任だ。「ハッピーな住まい手」には僕たち自身やその子孫も含まれる。

つたなくもそう考え、スタッフにも「そのために頑張ろう」と伝え、読者にもその意義を伝えてきました。


ただ、最近考えるのは、これだけではスタッフの「なぜ頑張る必要があるのか」という問いに対する答えとして足りないな、ということです。スタッフが共通の価値観をもって生き生きと働けるようにする。こちらに理念やミッションを落としていき、仕事の仕方や評価の仕方も定めなければいけない。

単純に言えば、企業文化や社風をどうつくり、現場の仕事と貢献・顧客満足に反映させるか、ということでしょうが、ここは難しい。

どういう状態が「生き生きと働いている」となのか、何をもって「貢献」「顧客満足」とするのか、こうした基本的な価値観から一人ひとり違うからです。

「クレド」や企業としての「way」を明文化することもそのための一手法なのでしょうが、手法の前に経営者やリーダーとしての、人としての価値観が問われています。

その意味で一番難しいのは、ブレない明確な価値観を常に磨き続けることなのかもしれません。結局は価値観なのだと、最近強く思います。
posted by miura at 12:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 住宅ビジネスのヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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