住宅専門紙「新建ハウジング」の発行人(社長)が、
住宅ビジネスのヒント・トピックをつづります。


2014年05月11日

住宅産業で差別化する2つの方法〜地力を高める・交差点をつくる


差別化の方法.001.jpg


[2011年のブログ記事を加筆したものです]

「差別化」というのは「差別」という語句が入っているのでいい言葉ではありませんが、すべての会社、すべての人に必要だと思っています。

他の会社、他の人と「区別」されなければ、「その他大勢」に埋没してしまいます。

それでいい、没個性こそが生き方という会社や人はそれでまったく問題ないと思いますが、マズローも言っているように人はあるレベルから自己実現、存在証明を求めるようになりますから、個性的であることを目指すようになる。それには差別化が必要です。

また、会社にとっては、「その他大勢」に陥ってしまうと、いばらの道を歩むことになります。差別化=強みが顧客に伝わらない状況で顧客に選ばれようとすれば他社より安くするしか、顧客に奉仕し尽くすしかなくなっていきます。
そこを強みとするのならいいのですが、価格競争や奉仕競争は、言葉はあれですが顧客はどんどん「王様化」していき、売り手はひとすら「ドレイ」化していくことになります。


差別化の方法としてしは

1 人より上手くやれるようになる
2 人のやらないことをやる

のどちらか、もしくはこの組み合わせだと思っています。


「人より上手くやれるようになる」ということは「地力」(じりき)を付けるということです。家づくりにおいては、設計力を高める、ということがその代表で、実際設計力を高めたつくり手は顧客に支持されていき、受注も伸ばしています。


「人のやらないことをやる」というのは、よく言われる「ブルーオーシャン」に行こうということです。ですがこれは簡単ではありませんし、リスクも大きい。それに突飛なこと・奇抜なこと=ブルーオーシャンという勘違いもあります。
ブルーオーシャンというのは、要は新しい価値・新しい満足を提供するということで、イノベーションの裏返しだと思っています。

一番簡単で確実なブルーオーシャン・イノベーションの実現は、新しい価値・新しい満足を既存技術の組み合わせで実現すること。これをうまくやっているのがアップルです。
僕は「交差点」という言い方をしていて、既存の家づくりに何をクロスさせるか、と考えるとイメージしやすい。たとえば、ベタな例ですが、家づくりに「健康」をクロスさせると「健康住宅」になる。今まで家づくりとクロスすることがなかった新しい何かをクロスさせることができれば、それだけでイノベーション=ブルーオーシャンは可能です。

交差点.001.jpg


また、差別化は一点で行うものではなく、差別化ポイント(強み)の組み合わせによってで雪だるま的に大きくし、簡単には真似のできないユニークなスタイルを構築することを目指します。

その際大事なのが「一貫性」です。
差別化ポイントをたくさん導入しても(FCやノウハウ販売によって)その組み合わせに「一貫性」がなければ、雪だるまとならずスタイルも構築できないということになります。そんなつくり手も姿を見ることも少なくありません。


そう考えると、差別化とは「やらないことを明確にする」ということで、それイコール「「フォーカス」(絞り込み)ですが、これはとても勇気がいることです。また、地力を高めるうえでも、ひとつの分野へのフォーカスが不可欠です。

フォーカスへの不安の中で心を強く持つには、価値観や美学、そしてそれを社員や顧客に伝える理念・ビジョンが必要です。また、一貫性を保つのも価値観や美学、理念・ビジョンです。

つまりは結局、価値観・美学が差別化の基本だということで、それを持たない会社や経営者が「真に」差別化をするのは難しいと考えています。


ただし、規模とフォーカスのバランスは大事で、一定以上の規模の収益を目指すなら、マスマーケットでの差別化を追求する、キャズム越えを目指す必要があると思っています。
posted by miura at 16:27| 住宅ビジネスのヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月05日

人口減少と人手不足と中古活性化でローコスト住宅はどうなる?

人口減少のリスクがそこここで指摘されるようになってきました。

たとえばこのNHKのルポ。全体の5割に上る896の市町村で、子どもを産む中心的な世代である20代から30代の若年女性の数が、2040年には半分以下になる、と。

詳細は記事でと思いますが、こうした人口減少や高齢化の加速は住宅の需要にも、職人やスタッフ確保などにも影響を与えることは言うまでもありません。

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こうしたことはドラッカー先生が指摘していた「すでに起こった未来」で、僕も、新建ハウジングでもずっと指摘してきました。

すでに起きてはいるけれど、その影響が顕在化するまでには時間がかかる、潜伏している課題が「すでに起こった未来」。とくに人口の変化、なかでも人口構成の変化が経済・社会に大きな影響を与え、企業・組織としてはそれが顕在化するまでのタイムラグにイノベーションと貢献のチャンスがあるとドラッカー先生は指摘しています。

住宅業界でも、タマホームなどのローコストビルダーや一建設グループなどのパワービルダーの成長の理由について、堅実派で土地なしが多い団塊ジュニア世代が住宅取得期=30代に入るという「すでに起こった変化」を先んじてつかまえたから、といった説明が成り立ちます。


この先は、前述のように人口減少+流出が加速。2040年という先の話をしなくても、住宅取得期の30代の世帯数は2010年〜2020年までの間に2割弱減っていく。これも「すでに起こった未来」で、この2割減は薄利多売モデルを取るローコスト系住宅会社には特にきつい。

また、「人手不足倒産」が叫ばれるほど多くの業界で人材確保が難しくなり、人件費も上昇。すでに建築業界では駆け込みに伴って瞬間的不足が起きていますが、今後は構造的な不足が重なり、これもローコスト系住宅会社には特にきつい。

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ローコスト住宅の基礎票を考えると、所得の二極化が進むとみられるなか、住宅市場でもローコストは一定のシェアを維持、さらに増加する可能性も十分あるでしょう。ですが、ここは今後中古住宅との喰い合いになっていく。ここに前述のパイの縮小、人材不足+人件費上昇が重なる。

中古活用と新築提案の切り分け。
つくり方・売り方のイノベーションによる生産性の向上。
人材の内製化と育成。
これらが急務ですが、これらもずっと言われてきた「すでに起こった未来」ですね。

今後ローコスト系住宅会社のなかには、超ローコスト路線を突き進む会社、グレードを高め価格帯も少し引き上げてコスパ勝負でよりマスを狙う会社、戦略が分化していきそうです。
posted by miura at 18:59| 住宅ビジネスのヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月01日

2013年度の住宅着工は98.7万戸、14年度は?

国土交通省が2013年度の新設住宅着工を発表しました。全体は10.6%増の98.7万戸。


2013年度住宅着工


持ち家(新築注文住宅)は前年度比11.5%増の約35万戸。僕も「住宅産業大予測」の2013、2014で35万戸と予測していましたが、ここは読みどおりに。
貸家は35万戸と読んでいましたが、実際はもっと伸びて15.3%増の約37万戸。分譲は3.8%増の約26万戸でした。持家、そして貸家が着工を牽引したことがわかります。


2014年度はどうか。先日建設経済研究所が4月時点の予測を発表しました。

建設経済研究所予測


全体は8.2%減の90.7万戸、持家は14.4%減の30.4万戸と予測しています。
僕は全体86万戸、持家は11%減の31万戸ぐらいかなと思っていますが。そうなると1割増えて1割減る、要は元に戻るだけということになります。


持家の現状は、たとえば積水ハウスで前年同月比30%前後戸建ての受注が減少するなどハウスメーカーも受注に苦戦。工務店もコスパ戦略をとっているところは好調の声も聞きますが、集客はあるものの、昨年10月以降受注に苦戦している傾向が見えます。

ローン減税や住宅ローン減税の恩恵を利用して今年建てると決めている層はすでに相当数いる。でも急ぐ理由がない。消費税が10%にアップするか不透明な現状ではなおさらです。
これが、集客はあるけれど受注に至らない一因でしょう。

このままでは、消費増税決定後にまた駆け込みが起きてしまう。それは顧客にも不利益となります。住宅ローン金利の動向を睨みながら、あおらないように背中を押して着工を平準化する(受注残が薄くなるタイミングで新規受注の着工がつながっていけば理想ですね)。

工務店の場合、ダラダラが続きかねない今年は、顧客に正しい建てどきを伝えながら受注と着工をスケジューリングしていくことが必要だと感じています。また青田刈りを急ぐハウスメーカーへの対応策も必要でしょう。

posted by miura at 08:31| 住宅ビジネスのヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月13日

里山資本主義・コミュニティデザインと地域のつくり手

 地域密着―地域のつくり手が地域とどう関わるかは、地域のつくり手にとって古くて新しい課題です。


里山資本主義.JPG

里山資本主義×地域のつくり手
 
 キーワードとしてはたとえば、エコノミストの藻谷浩介氏が提唱する「里山資本主義」があります。

 「奪い取る」「未来・次世代から搾取する」従来型資本主義の限界を指摘、地域の資源とコミュニティの価値・豊かさを「里山」というキーワードでくくり、これらを資本に自給自足・知足(足るを知る)+循環型の経済へと転換することを説くもの。
 いろいろ言われていますが、基本的な方向性は間違っていないと思います。

 地域のつくり手が取り組む「地域材による地域型住宅」も里山資本主義と同一線上にある取り組み。より視点と業域を広げ、よりつながることで、地域のつくり手は木を核とする里山資本主義の主役となれるはずです。


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コミュニティデザイン×地域のつくり手

 「コミュニティデザイン」というキーワードもあります。
 
 地域の課題に、人と人のつながりであるコミュニティという観点から解決に貢献しようとする手法です。
 地域の人々の相談にのりながら解決策を一緒に考え、活動をサポートしていける人材=「コミュニティデザイナー」の必要性を説き自らも実践する山崎亮氏(studio-L代表)の取り組みで注目を集めています。

 地域のつくり手の場合、住まいと暮らしを通して地域のコミュニティに貢献できますし、とくに工務店の場合、すでにオーナー(OB)というコミュニティを持ち、またカルチャー教室や感謝祭などのイベントを通じて地域のコミュニティと関わっています。そしてこのつながりをもっと地域の課題解決に活用することもできるでしょう。
 
 そう考えると、地域のつくり手は「コミュニティデザイナー」として大きなポテンシャルを持っていると言えます。


いま問われていること

 今後地域のつくり手には、地域でコミュニティをつくり、業域を建築から少し広げ、地域課題の解決に貢献することが一層問われてくるでしょう。

 これは古くて新しい「三方良し」(顧客+社会+自社の利を共に目指す)のかたちです。幅広い顧客に新しい価値を提供することで地域の衰退を食い止め地域とともに事業を継続する。

 こうした仕事のかたちを「楽しい」「充実感がある」と選ぶ人が若年層を中心に増えていて、地域に帰り、また移り住み、小商いを立ち上げ、つながり始めている。地域が変わり始めている。
 
 地域のつくり手の未来像が見えてきたように思っています。
 

 こんなテーマを考えるフォーラムを開催します。
 4月23日「コミュニティビルダーフォーラム」。基調講演には山崎亮さんをお迎えします。

 よろしければご参加ください。
 
posted by miura at 21:06| 住宅ビジネスのヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

前川國男のプレハブ住宅「プレモス」

前川國男自邸内観

前川國男自邸


[2011年の記事の再掲です]
記者になったとき教科書として手に取った「昭和住宅物語」(藤森照信)は定期的に読み返す愛読書のひとつです。
先日も読み返していたら、前川國男の記述のところに気になる一説を見つけました。


前川が「プレモス」と呼ぶ木造の量産住宅に取り組み、結果として失敗したことは、前川の建築をたどったことのある人にはよく知られた事実だと思います。
プレモスは床壁をパネル化した木の小さな箱で、小さな家のプロダクトと言えるかもしれません。
もの自体は終戦直後(昭和21年)ということもあり、前川らしい魅力はそれほどなく代替住宅的に使われたようですが、1000棟を生産して役割を終えました。


藤森氏は「昭和住宅物語」のなかでこう書いています。
(前略)プレモスが、前川國男というモダニズムのエースにより手掛けられながら結局失敗に終わった、ということろに僕は感慨を禁じえない。
なぜかと言うと、戦後の時間を一貫して、日本のモダニズム建築家の中には、「量としての住宅に取り組まなくてはならない」という、国民のために働く建築家としての使命感があり、また「住宅を工業生産のラインに乗せてみたい」という工業化の時代に生きる建築家としての夢があり、この使命感と夢が結合すると「プレハブ住宅の開発」という行動に向かい、そしてなぜか必ず失敗する。
国民のために働く建築家としての使命感。現在の建築家、設計者の使命感はなんでしょうか、あるのでしょうか、と偉そうに思ったりします。


このプレモスはニッサンを一代で築いた鮎川義介が関わったことでも面白いプロジェクトでした(最後は決裂したそうですが)。この点についても藤森はこう書いています。
モダニズムという建築思想はそのスタートのときからいつも<車>というものをヒリヒリするくらいに意識してきた。<建築と技術>というテーマを建てるときは常に車のことが頭にあった。飛行機でも船でもなく、「動く居室」的な性格を持つ車こそもっとも建築に近いと考えられながら、しかし一方、その製造方法が建築と違って徹底的に工業化されているという点が、建築家をしてますます車にのめり込ませてきた。



さらにこう続けます。なるほど、と思う部分です。
「車のように住宅をつくりたい」
この夢を一度も見なかったモダニストは少ないと思う。プレハブ住宅の開発に取り組んだ建築家は、大げさに言うと、みな車に片想いし、結局、結ばれることなく恋に破れながらバスユニットとかなんとかを手掛けて、自分を慰めてきたのだった。



社会的使命感(「量」ではない違う使命感―僕はコストパフォーマンス向上だと思っています)と夢は、まさにいま結合する可能性があるのではないか、と考えています。

posted by miura at 19:21| 住宅ビジネスのヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月06日

デザイナーの家具を大工がつくり工務店が届ける 「大工の手」

職人が手仕事でつくる道具を、デザイナーが計画して、工務店が四方良しの価格で顔の見える関係を結んだ住み手に手渡す。このプロセスすべてをできうる限り「誠実」に行う。
こんなものづくりに共感するプロが集まり、知恵としくみを共有、職人と手仕事の復権を目指す。
そんな手仕事のプラットフォームを目指す「わざわ座」が結成されました。発起人はデザイナーの小泉誠さん、工務店の相羽建設さんなど。

その第一弾プロジェクトが「大工の手」。
デザイナーが描いた図面にもとづいて、家を建てた大工が端材や古材で家具をつくり、その家の住み手に提供する。
これまでとは異なる顔の見えるルートで家具を上質な住み手に届ける、画期的なプロジェクトです。

大工の手.jpg


先日、立ち上げのその想いや活動をお聞きしようと、小泉誠さんにインタビューしてきました。
ほんの一部をご紹介します。

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三浦:モノの魅力とデザインの力は切り離せません。
デザイナーが設計し、大工がつくり、工務店が届ける、という「大工の手」における「分業」の意味と価値はここにあると感じました。

小泉:ものづくりには分業が不可欠だと思います。我々デザイナーは日々トレーニングをしています。
たとえば、デザインのヒントとなるコンテンツをどれだけ蓄積しているか、それをどう再編集するか、常に考えているのです。
トレーニングを積んでいない人がデザインしても良質なものはできません。

三浦:デザインのトレーニングを積んでいるデザイナーがデザインする。同様に、作るトレーニングを積んでいる大工が作り、売るトレーニングを積んでいる工務店が届ける。
これが合理的で、プロフェッショナルがつながって分業すればいい。
つながるためのプラットホームが「わざわ座」ですね。

小泉:第一弾の「大工の手」の家具は、使いやすさだけでなく作りやすさも考えてデザインしました。
大工が自分の技術と道具でつくれるようにしています。

三浦:家具メーカーとの仕事よりデザイン上の制約が多かったのではないでしょうか。

小泉:制約があったほうがユニークなものができます。合気道と同じですよ。
相手の力が強いほうが、それを上手く利用すると遠くに投げられます(笑)。


他にもたくさん腑に落ちるお話をお聞き出来ました。
一部は「わざわ座」の冊子でも紹介されます。

4月18日、19日に実際の家具が見れるお披露目会が。19日には小泉誠さんのトークも。関心を持った方にはいい機会だと思います。
詳しくはこちらから。

小泉さんによる紹介文はこちら
posted by miura at 22:17| 住宅ビジネスのヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月03日

消費増税後の住宅市場 4月以降につくり手が考えること

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安倍首相は再増税を決断するか。再増税がなければ当然第二次駆け込みも起きない


4月に入り、住宅業界は受注が戻るか注目されています。ローン減税と給付金でおトクになる層、所得で言えば下と上の層の中には「今年建てる」と決めている層も一定いると思われます。

ただし、こうした層も今は「急ぐ理由」がありません。4−6期は現業界の予想以上の駆け込みの反動減で景気の落ち込みが心配され、早くも消費税再増税に及び腰の声が聞かれる。建築業界も以前職人・資材高やキッチンなどの納入遅れが報道され、不安をあおる。ローン減税や給付金の恩恵が少ないミドル所得層はなおさらです。

背中を押す材料としてはローンの先高感ですが、ここは読みが難しい。景気が回復すればローン金利は上昇しますが、回復はまだら模様なうえ、ローン需要を取り込むため低金利戦略を継続する金融機関も出る。「買い時」感をどう醸造し背中を押す提案するか、へたをするとだらだら低空飛行を続けそうな市場のなかでは重要です。

とはいえ、ブランド力と資金余裕のあるつくり手にとっては、こうした市場をチャンスに変えることも可能でしょう。他者が萎縮する中で攻めに出る。
まずは情報発信量をどーんと増やすこと、そこに新商品・新サービスの投入とイベントやキャンペーンを重ねること、同時に今後潜在客の育成も進めること、など余力のある会社だからできることはあると思います。

駆け込み受注で生まれた余力をどう「攻め」と「再増税後の備え」に使うか。すぐに検討したいテーマです。

積水ハウス.jpg
積水ハウスの受注速報

posted by miura at 22:55| 住宅ビジネスのヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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