住宅専門紙「新建ハウジング」の発行人(社長)が、
住宅ビジネスのヒント・トピックをつづります。


2006年12月12日

団塊世代と社会起業家

sino.JPGいわゆる団塊世代から+5歳ぐらいの人たちと話していると、まだまだ働く気まんまん、余裕を身ににまといながらも、若いもんにはまだ負けないよという自信を眉のあたりに漂わせている人も少なくない。

僕はこういう人たちが嫌いではない。そして実際かなわないな、と思う。彼・彼女たちには時間も経験も、そして概してお金もある。僕ら(僕と言ってもいい)には時間も経験も、そして概してお金もない。情熱や体力は負けないぞ、と思っても、現状に疲弊し擦り切れている若年世代はこれらでもかなわないかもしれない。

まあ情けない話だがそこはとりあえず置いておいて、意欲のある団塊世代の人の知見や人脈に助けてもらう、といったことが必要だと思っていて、住宅産業でも退職した方がどんどんコンサルタントなどとして起業したり、顧問として別の会社に入ったりすればいいな、と思っている。このことは以前のエントリでも書いた。

もうひとつ、社会起業家というのはどうか、と思っている。横文字でいうと「ソーシャル・アントレプレナー」で、わかりやすく言えば「社会問題を起業家精神で解決する人」。「ソーシャルベンチャー」といった言い方もされる。3、4年前に話題になったが、個人的にはドラッカーに親しんでいたのでこういった生き方もありだなあ、と考えていたりもした。で、勝手な物言いだが、団塊世代の皆さんに社会起業家を目指してみるのはどうか、もしくは若い社会起業家のサポーター(実務・資金両面)となっていただくのはどうか、と思っている。


先日、未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家という本を読んだ。すでに有名な企業も載っていたが、中国の「シノフォレスト」という「森の再生ビジネス」を手掛ける会社は、中国で、という点で興味深かった。

モデルは単純だ。5年ほどで成長するユーカリなどを植林し、丸太や板材として販売する。その伐採量は植林した量の5分の1までとし、持続的な経営を目指す。奥地まで伐採したり輸入したりするよりもコストが安く済むため、2割安で販売できるという。

やるな、と思ったのは事業の立ち上げの話だ。
まず、中国政府から2万ヘクタールの土地を50年契約で借り受け、地代として年間生産量の30%を国に納めることになった。(中略)
世界じゅうの林業を手がけるカナダの投資銀行に対し、中国市場の今後の可能性を示しながら説得を試みる。こうして、彼は500万ユーロの融資を獲得、トロント第二の市場に上場する。
このバイタリティはすごい。

現在は60万ヘクタールの「森」を経営し、2004年の売上高は2億5000万ユーロ、純益は3200万ユーロを超えている(1ユーロ=約150円)。木材加工場ももち、合板やおがくずの製造も行っているという。この本では、創業経営者のアレン・チャンのこんな言葉が紹介されている。「地球環境を破壊しなくてもお金を稼ぐことはできるのさ」。

「思い」だけで企業して成功するのは難しい。特にベンチャーの場合は資金や人脈、メンター、そして企業としての「システム」が不可欠となる。そこを団塊世代の皆さんがカバーできるのではないか、と考えている。

(写真はシノフォレストのホームページ

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2006年12月03日

若者はなぜ3年で辞めるのか

4334033709.01._AA240_SCLZZZZZZZ_V40026401_最近読んだ本。

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来

ああ会社つまんねえ、希望がねえ、と感じている「若者」がこの本を手にとっているのか。それとも経営サイドが「若者対策」として読んでいるのか。内容がどうこうというよりは、この本がベストセラーになっている日本の現状が興味深い。

内容の中心は、年功序列制度を中心とする「昭和的価値観」の功罪解説と、それによって実に3人に1人が入社3年で辞めているという「若者」の実情紹介で、「若者」―特に大企業や行政などで働く人にとっては何かしら感じるところはあるはずだ。個人的には、就職3年前後の若者よりもむしろ、今後の社内キャリアに悩む一方で、転職の上限年齢にも差し掛かっている団塊ジュニア前後世代に特に響く本だと思った。

例えば、大手の子会社となったIT系企業の若手が、親会社から送り込まれた経営陣の人件費が全体の7割を占める現状に対して、「彼ら(親会社から来た経営陣)を食わせるために、僕の人生があるわけじゃないですから」と不満をもらすくだりとか。


この本ではこうした若者がもつ「閉塞感」については丁寧に解説しているのだが、結論らしい結論がない。「考え、アクションを起こそう」という若者へのメッセージがあえていえばそうだ。だが、確かにそうしか書きようがなかったのだと思う。

僕もギリで若者に入るのかもしれないが、周りの同世代を見ても仕事に対する考え方や価値観は多様で、年功序列をはじめとする昭和的価値観にどっぷりつかっている人もいれば、そんな価値観に反発してレールから降り起業した人もいる。仕事はほどほど、でも趣味と副業で楽しそう、という人もいる。どれが正解とは言えない。だが、閉塞感とストレスでのたうちまわるぐらいなら、結論はどうあれ、考え、アクションを起こし、すっきりした方がいい、という点はまったく賛成だ。

一方で、こうした多様化の中で何千人・何万人というマスの単位で雇用していかなければいけない大企業は大変だろうなと思う。確かに人事制度がある意味企業の持続的成長のカギを握るのだろう。

で、個人的に興味があるのは、こうした仕事に対する考え方や価値観が多様化してきた中での地方中小企業の可能性だ。この本ではここにはほとんど触れていない。大企業を3年で辞める若者の中には、中小企業に就職する人も少なくないだろう。中小企業が若者の真の受け皿となるのか。基本的にはスモールビジネスである住宅産業が若者の力を生かすことができれば、また違う展開が見えてくるのではないか。読んでそんなことを思った。

あと蛇足ながら、経営陣が読んでもそれほど参考にはならないだろう。経営陣向けの人事コンサルが筆者の本業のようだが、それは別の本(日本型「成果主義」の可能性)で解説してるそう。


第1章 若者はなぜ3年で辞めるのか?

第2章 やる気を失った30代社員たち

第3章 若者にツケを回す国

第4章 年功序列の光と影

第5章 日本人はなぜ年功序列を好むのか?

第6章 「働く理由」を取り戻す


●印象に残ったセンテンス
「もっと日本中のいろんな企業で積極的にインターンを受け入れれば、新卒の離職率は下がると思いますよ。わがままな人でも、楽しい仕事なんてあるわけないってわかるわけだから。社会人としていちばん必要な素質は忍耐なんです」

世の中には、決して高賃金でなくても、立派に社会貢献できる尊い仕事や自分を自由に表現できる創作的な仕事も多い。
要するに、その仕事に携わる本人がどれだけ満足感を得られるかだ。たとえ生涯賃金が三割ぐらい目減りしたとしても、やりがいのある仕事を定年まで安定して続けられるなら、それも一つの立派な選択肢だろう。

年功序列制度は、組織の方針を信頼し、将来を託すという意味で、一種の宗教に似ていなくもない。写経を続けていればいずれ極楽へいことができると信じられているからこそ、人は写経をするのだ。出口のない牢獄の奥で毎日数字を書きなぞっていれば、心身に変調をきたしても無理ない気がする。

企業のなかでレールに乗って順調に先に進めるか、それとも完全にキャリアパスが止まってしまうのか。それがはっきりとわかる年齢は、おおかたの企業において30代だ。
これが企業内で30代が壊れていく最大の理由だろう。プレッシャーというよりは、閉塞感というほうが正しい。
posted by miura at 12:49| Comment(0) | TrackBack(1) | 読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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