住宅専門紙「新建ハウジング」の発行人(社長)が、
住宅ビジネスのヒント・トピックをつづります。


2010年05月19日

自社が強みだと考えていることは、たいてい間違っている

弱みを人並みにするエネルギーと時間はハンパなものではありません。強みを伸ばすほうにエネルギーと時間を注いだ方が成果があがります。また、弱みで事をなすことはできません。なせるとすれば、強みだけです。

ところが、ドラッカーも言っていますが、自社の強み、自分の強みを把握することは簡単ではありません。しかもたいてい自社・自分が強みだと思っているものは間違いで、わかるのは弱みぐらいです。


自社・自分の強みを把握する一つの方法は、周りに、特に顧客に聞くことです。

それが一番確実ですが、その結果思いもよらない答えが返ってくる可能性が、かなり高い確率であります。そのときに強みを修正することはせず、顧客が感じていた強み(顧客からすると魅力・メリット)を伸ばしながら、自社が強みにしたいことを育てていくことになります。ただし、自社が強みにしたい部分が、顧客から見ると弱み(デメリット)になっていれば、それは強みに育てるのは難しいでしょう。


最近、自分が、自社が強みだと思っていた部分ではないところに価値を感じていただけることが多く、逆に強みだと思っていた部分はそれほどでもないなと感じることが増えてきました。ショックではありますが、チャンスだと思い、そこを伸ばしていこうと思っています。

また、先日久しぶりに師と一献傾けましたが、師の強み構築の徹底ぶりに改めて凄みを感じました。強みと考えるものをどこまでリソース(資源)として社内に持つか。構築するか。考えさせられました。ただ、外部から見ると、その会社の強みは師の持つインテグレート(統合)力にあると思うのですが。


工務店としても、怖いですが、あらゆる機会をつかまえて、顧客に自社の魅力について聞いてみることをお勧めします。それも「家守り」のひとつです。



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2010年05月11日

プレミアムの3つの要素

「プレミアムな家を提案するにはまず目利きを育てることから」というエントリの続きです。

「プレミアム」とは、一言でいえば、「プラスアルファの付加価値」で、その付加価値のために上乗せ価格を払ってもいいという顧客が存在すれば、ビジネスとして成り立ちます。

このことは「プレミアム」=「高額商品」を意味しません。すべての価格帯の商品群に、上乗せ価格を払ってもいいプレミアム市場が存在する、ということです。

住宅の世界で言えば、「高級住宅」だけでなく、普及価格帯についても「ちょっと高い」プレミアム市場は存在すると考えています。


僕なりに「プラスアルファの付加価値」整理したものが、

1 機能・サービスへのこだわり →ならではの品質

2 感性・感情への訴えかけ   →高い共感・ストーリー性

3 ブランドの構築・維持    →オーナーの満足・誇り・絆

の3つです。


工務店で言えば、1の「ならではの品質」を高めること=建物やサービスのレベルを高めることが基本です。

普及価格帯の場合は特に、すべてにこだわるのではなく、ほどほどの品質の部分と自社がこだわる部分のメリハリをつけることが、コストアップを押さえながら「ならでは」=尖った強みをつくることにつながります。

工務店の場合、サービス=顧客対応の部分で「ならではの品質」を高めていく方が、実は建物で差異化するよりも早く、満足度を大きく高めることが少なくありません。それには、ハウスメーカーを含めた他社が重視していない部分で、「まだ満たされていない顧客の欲求」に目を向けることです。

新建ハウジングでは住宅を取得した・取得中の生活者500人に「いい営業スタッフ・悪い営業スタッフ」の調査を行いましたが、そこから「まだ満たされていない顧客の欲求」の一端が見えてきました。5月30日号のプラスワンで解説したいと思います。


プレミアムの条件2、3については追って書きたいと思います。
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2010年05月10日

プレミアムな家を提案するにはまず目利きを育てることから

節約疲れからか「ちょっとプレミアム」なものが売れ始めているという話を聞くようになりました。

節約疲れかどうかは微妙だと思っていて、むしろ30代以下では節約が常態であり(しかもそれを格好悪いとは思っていない)、自分が価値を感じるコトにのみプレミアム消費をするのだ、とみています。

プレミアム消費は、平たく言えば「目利き」消費です。

好きで詳しい=こだわるからこそ、目利きができて、自分に合ったいいものを選ぶ。

ビールなんかは典型で、毎日好きでビールを飲む人なら発泡酒や第三のビールとプレミアムビームの味の違いがわかるはず。そんな人なら、毎日と言わないまでも、休日にはプレミアムビールを選ぶ、という消費パターンが見えてきます。


住まいについてどうかと言えば、真に住まいに価値を感じている生活者は少ないように思います。つまり、えいやで言えば、好きでこだわっている人が実は少ない。目利きが少ない。

うちはプレミアムな家を提案しているのにどうして生活者に伝わらないのだろう、と考えているつくり手も少なくないと思いますが、それは目利きが少ないからだ、ということもあるのです。


目利きとは、何が良くて悪いか判断できる人で、物差しを持っている人です。逆に言えば、何がいい家か、何が豊かで楽しい暮らしかという物差しが普及していなければ、住まいの目利きは育ちようがありません。

住宅雑誌の多くは(当社のものも含めて)、物差しを提供するものではなく、分からないことを知りたいという生活者の欲求を満たすつくりになっています。これはこれで価値があるのですが、目利きを育てているのはむしろライフスタイル誌のほうでしょう(こちらも最近元気がありませんが)。ネット上にそのための情報が断片的にはありますが、それを選別収集するのは至難です。


メディアに頼れないとすれば(僕が言うと自虐的ですが)、つくり手は自らの物差し=価値観をどんどん発信して目利きを育てるべきです。そしてそれは、ネットの進化やつくり手のスキルアップによって、小さなつくり手でも十分可能になっています。

古くは小冊子、そしてブログやホームページが活用できるのはもちろん、ツイッターやユーストリーム、電子ブックといった新しいメディアがただで使えるようになっていることは大きなチャンスです。


ですが、一番の伝達手法は見学会+家づくり勉強会です。少人数でもいいので、家づくりのノウハウだけでなく、いい家の価値観、豊かで楽しいくらしとはなんだという価値観を伝える。

その価値観と建てている家、オーナー(OB)の暮らしぶりに一貫性があり言行一致していれば、共感・納得してもらえ、売り込み(セールス)がどんどん不要になっていくはずです。

そして、一度共感・納得してもらえれば、他社を見て回ったり、家を建てるのが先であったりしても、いずれは帰ってきていただける確率が高まります(放牧型マーケティングとはそういうことです)。


まとめますと、プレミアムな家を提案しようと思ったら、価値観・物差しを伝えて目利きを育てる必要がある。実はそれがマーケティングの重要なポイントになる、ということです。


新建ハウジングの編集顧問をお願いしているシンケン(鹿児島)の迫英徳社長は、このことを早くから理解し、徹底されているように見えます。そこには相当の時間と厳しさ(そしてお金)を注いできたはずです(シンケンさんの新しい取り組みを新建ハウジングの5月10日号で紹介しています。ご覧ください)。僕自身も見習うべき部分だと思っています。
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2010年04月16日

雑感、手づくりがニッポンの家づくりを変える?

学生の頃、民芸について調べていたこともあり、「手づくり」ということをよく考えていましたが、便利なようで難しい言葉だと思います。

雑感レベルでえいやで言ってしまいますが、プロの職人がつくるものを手づくりの魅力というのは正しいのかしら、という気がしてしまうのです。

もちろん、プレハブ住宅ではない、という意味での手づくりの家という言葉づかいはありなのでしょう。ですが、職人というものは極めていくと機械レベルに精巧で丁寧な仕事ができるようになり、人間離れしていきます。それは素晴らしい技術で、手づくりというより芸の域だと思います。

僕は、職人芸をもつ設計者の設計を職人芸の職人がつくった家が大好きです。好きだからこそ、それは手づくりの家とは呼びたくないな、と思うのです。


僕は一方で、ハーフセルフビルドにも可能性を感じています。そして、住まい手が自分の手で下手に不器用につくる家こそ「手づくり」だと思っています。

そこには職人芸とは間逆の魅力があり、それは手が心とつながっているからだと思います。楽しみながらハーフビルドした家は楽しげに仕上がる。塗り壁を施主の家族が楽しそうに塗っているのなんかをみると本当にそう思います。

特に子供は自分が下手で不器用であることなど考えません。それが良いのだと思います。だから、はっと心が動かされるものができたりします。大人は不器用であることを恥じたり、逆に「玄人はだし」を目指そうとするので、手づくりの面白さがモノに出てきません。


日本でDIYがいまひとつ普及しない理由はここにありはしないか、と思っています。日本人は手づくり=職人芸を想像してしまう。そのレベルを求めようとするから、自分でやることをあきらめてしまい、職人頼みになる。また、職人芸を求めるから、新築・リフォーム時のチェックも厳しくなる。だからつくり手が委縮してしまう。

手づくり=素人が不器用でも下手でも楽しむものだ、という意識が広まり、実践する人が増えるといいな、と思います。それは暮らしを豊かに楽しくすると思いますし、何か文化が生まれるような気もします。

分野は違いますが、ブログやツイッターもそういうものだと思います。文章など下手でも不器用でも気にせずに楽しんでいる。それは人生を豊かに楽しくしていると思います。

そして家庭菜園やファストファッションのプチリフォームなど、若い人たちは確実に手づくりの楽しさを知り実践を始めています。こういう層の中にはハーフセルフビルドに向かう人も多いはずだ、DIYを楽しむはずだと考えていて、そうすると中古住宅もうごくなあ、とか、そんなところからもニッポン家づくりは変わる予感を持っています。
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2010年03月14日

地域で一番親切な工務店

最も大事で最も難しいこと、それがフォーカスです。僕は、「誰に」「何を」「どうやって」を考えることがマーケティングだと思っていますが、それは何にフォーカスするかを決めることに他なりません。逆に言えば「やらないこと」を決めることです。自戒もこめて本当にそう思います。


強力なライバルがいる場合は、特定分野にフォーカスして、その分野でイメージシェアのトップを目指します。


先日、地元の駅前に行列ができていたので行ってみると、豆腐ドーナツの小さなテイクアウト店がオープンしていました。

このお店のフォーカスは「ヘルシー」「豆」(=動物性ではなくて植物性)です。ドーナツというとたまに無性に食べたくなるのだけれど、カロリーや健康リスクが気になります。それをくつがえし強みにしたわけです。

さらにそのお店は、自家製の豆乳、さらには豆腐や幻の納豆も販売、揚がるのを待っているお客に無料で豆乳をふるまっていました。ヘルシー・豆にフォーカスしたことで、新しい市場を生み出したと言えます。納豆は売り切れ、豆腐も売れていました。上手いなと思います。


品質が優れているのにライバルに勝てない会社はたくさんいます。そのときに必要なのがフォーカスですが、自社の強みは意外なところにある場合、素朴なところにある場合もあります。

たとえば、ハードにフォーカスするのではなく、「地域で一番親切な工務店」。簡単そうで難しいこうしたポジションに自社を位置づけるのもありだと思っています。
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2010年02月26日

団塊世代の住宅需要

ドラッカー先生にならって常に人口の変化を注視するようにしています。

30代の動態については当事者であることもあってそれなりに把握をしているつもりですが、団塊世代の動態や住宅需要についてはヒアリングなどをしてもぼんやりしていてよくわかりません。。

リタイアを期に二地域居住や田舎暮らし、ライフスタイル実現型のリフォーム、終の棲家の新築に動くのか。仮説としてはどれもありそうですし、団塊世代のリタイアも終盤にかかってきたなかで実際に動いてはきているのでしょうが、大きなうねりには、市場にはなっていないように見えます。


そのなかで先日、団塊世代の人たちはサービスなどの要求レベルが高い、という話がリフォーム業者さんたちから出て、なるほどと思いました。クレームの大半は感情的なものが原因だと思いますが、自分に敬意が払われていない、ないがしろにされていると感じることが続いたときに、それは大きな怒りとなって表に出てきます。

先日もある方から、リタイア直後の人は、それまでは会社で上の立場にいて敬意を払われていたのに、リタイア後はそれがなくなる。だから、リタイア直後の人は今まで以上にないがしろにされているかどうかに敏感になるんだ、という話を聞きました。僕はこの話が正しいかどうかはわかりませんが。想像はできます。

また逆に、僕の知っている60代の方々は第一線でばりばり仕事をされておられ、まだまだ負けないよ、というなにかぴりっとしたものも感じます。

結局、定年という制度が現実に合わなくなってきているのでしょう。そのなかで新しい仕事のスタイルやコミュニティへの参加みたいなものが必要で、次にやりたい仕事やできる貢献が自分にも見えて来た人は住宅についても考え始めるのではないか、と考えています。

逆に、「悠々自適にのんびり」を理想とする方はこの世代に少ないように見えますし、そんな方の住宅需要は今の時代には少ないように思いますが、どうでしょうか。
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2010年02月08日

信頼の獲得コスト、信頼の回復コスト

マーケティングの世界では順番が大事だと、マーケティングを学んでいたときに叩きこまれました。

まず、信頼を獲得し、その後個性を認知してもらうこと。
まず、感覚で「素敵」「欲しい」と感じてもらって、その後「理屈」で納得してもらうこと。

本当にこの順番は大事だな、と今再び感じています。特に信頼を獲得することの難しさ。


もうひとつは信頼を裏切ったときの対応です。今のトヨタを見ていて本当にそう思いますが、ここはあれほどの企業でも難しい、というかお粗末に過ぎる。

信頼を獲得するコストは大変なものですが、信頼を回復するコストはそれ以上に膨大なものとなります。それを負担できず、退場していく企業も少なくない。

今回のトヨタはマーケティングの教科書に載るぐらいの典型的なケースです。今後どう信頼を回復していくのか、注目したいと思います。


偉そうなことを言っていますが、メディアも今信頼を問われています。
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