国土交通省が「住宅履歴書」(履歴情報)の制度構築に着手するとの報道が出た。国が信頼できると認めた履歴書のある住宅(で長寿命住宅の認定基準を満たし認定を受けた住宅)には減税措置を適用する、という。本日、国交省の来年度予算の概算要求が出て、その概要が明らかになった。これらを進めるために「住宅循環利用促進法」(仮称)なる新法を来年度の国会に提出するという。
「住宅履歴書」については先日新建ハウジングでも取り上げ、今後制度構築が検討されるのではないか、としていたが(そのときは「家歴書」と呼んでいた)、意外に動きが早い印象だ。
業界では「切れ者」と評判の新住宅局長の面目躍如といったところだろうか。これで打ち上げた花火は、「健康維持増進住宅」(トクホ住宅)に続いて2発目か。いいペースと言える。
ただ「住宅履歴書」のある住宅(=長寿命住宅の認定を受けた住宅)に減税措置、というのは、そうしたいという国交省の希望であって、今後の税制改正要望で認められれば、という前提条件が入る。今回の報道は、今日発表される国交省の概算要求と今後の税制改正要望を踏まえたタイミングでの国交省からのリークと考えるのが自然だろう。
さて、「住宅履歴書」については「いいこと」であるので、どんどん進めてもらえば、と思う。実際は住宅性能評価書+アルファといった感じになると思われ、国交省としては戸建て注文で伸びない住宅性能表示制度の利用率を底上げしたいという思惑もあるのではないか。
制度は国がつくるものの、現状では民間にデータベースなどの管理は任せるといった方針らしいので、民間企業にとってはビジネスチャンスになる可能性はある。ただ一方で、性能評価機関(もしくは住宅保証機構とか)がその担い手に、といったストーリーもあるのかもしれない。また国が長寿命住宅・履歴書に認定を与えるということであれば、「お墨付き」の常道としての天下り的な香りもする。
ただ、登録された履歴にモレやウソがないか公的機関が機関がチェックし、あれば罰則をという話も報道されたが、これは実質的に難しいのではないか。さてどうチェックするのか、確認検査とマッチングするのか。そこまでやるなら国がデータベースの運用までやった方が早いのではないか、という気もするが、どうなのか。
新法をつくって、住宅履歴書を整備し、認定制度を設けて、それに税制優遇などの金融誘導をくっつけて、住宅のメンテナンスの適正化=長寿命化とストック市場の活性化をうなし、そのついでに官製的ビジネスを興す。なかなか見事なストーリーだが、どうせやるなら徹底的にやってもらいたい。
逆に言えば徹底的にやらなければ、新築偏重の日本の住宅市場は方向転換できない(結果的に転換してしまう可能性はあるが、その場合屍が山と積まれた後になる)。市場の整備はもちろん、つくり手・住み手双方の思想の啓発などやることは多い。そこまでやる覚悟が国交省にあるかどうかだろう。
また、つくり手も、どちらにしても新築注文市場は縮むのだから、この流れに乗るの手もあるが、乗るなら本気で乗る覚悟が求められるだろう(もちろん乗らない覚悟があってもいい)。
乗るのなら、つくっている家の仕様・コスト、そしてデザイン、ビジネスモデルなどを、さらにストック型にスライドしていく必要がある。そして住み手に本気で啓発していく必要がある。
個人的には、消費者の視点から見て、「いいものを長く使うことで実現する豊かな暮らし」を広めていくことが必要だ、と思っている。
また、購買力的に中古しか買えない(買うべきではない)層がもっと増えてくる中で、ストック市場の活性化は必要も必要だ。
そのなかで、住宅の財産価値が維持・向上される世界が、徐々にでも形成されればいいな、と思っているし、こうした市場の中で「持続性」を基本とする工務店が家づくり・家守りの主役になるはずだとも思っている。
posted by miura at 14:51|
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