住宅専門紙「新建ハウジング」の発行人(社長)が、
住宅ビジネスのヒント・トピックをつづります。


2008年03月20日

真の長寿命住宅、真の家守りを〜長期優良住宅普及促進法案、雑感2

前回のエントリに続いて、長期優良住宅普及促進法案について雑感を書いてみたいと思います。

この法案では当初アドバルーンとして打ち上げられていた「200年住宅」という言葉がまったくでてきません。

しかも、長期優良住宅として計画認定を受けるための要件として「30年以上」の維持保全期間が盛り込まれているのですが、逆に言えば維持保全期間は30年でもいいということで、200年→30年とずいぶんなスケールダウンとなりました。もちろん30年の維持保全期間を更新していけばいいわけですが、ずっこけた方も少なくないのではと想像します。

しかし、割り切って考えるならば、性能表示の等級レベルを満たして30年維持保全する仕組みを計画すれば、長期優良住宅としてのお墨付きがもらえ、金融優遇が受けられるわけですから、この際うまく使ってしまえ、ということも言える訳です。


私自身は「うまく使ってしまえ」+「真の長寿命住宅+真の家守り+長寿命住宅の豊かさの構築+アピールを」という考えです。

この長期優良住宅の土俵「だけ」に乗ってしまうと、大手ハウスメーカーもローコスト住宅会社も工務店も「同じ」長期優良住宅+家守りにくくられ、埋没し、工務店は差異化が難しくなります。

ですから、工務店は、お墨付きと金融優遇はうまく使いながら、自社が考える「真の長寿命住宅」と「真の家守り」をアピールし、住み手にその違いと価値観を理解してもらう必要がある。そう考えています。


「真の長寿命住宅」とは、たとえば住宅は最低何年持たせるべきで、そのために何が必要か(私は山のサイクルに合わせるのがいいのでは、と思っていますが)、メンテナンス・更新がしやすい工法と素材は(私は標準的な工法+入手が容易な自然素材がいいのでは、と思っていますが)などについて考え抜き、それにあわせて設計コードや標準仕様を整理したもの、といったイメージです。

「真の家守り」とは、たとえば定期点検の仕組みや家業的経営ならではの経営の持続性、そして実際に家を長期間守る担い手としての職人の確保・育成などについて考え抜き、仕組みや経営方針とすることです。

もうひとつ大事なのは、長寿命住宅が人と社会と地球にどのようなメリットを与えるのか、どんな豊かさが、選択肢がもたらされるのか、ソフトの部分のアピールとその実践のための仕組みづくりです。長期優良住宅はハードにばかり目が向きがちですが、質のいいものを長く大事に使うことで経済的・環境的負荷が軽減される「ストック型社会」の実現に寄与するものである、という視点を忘れてはいけないと思っていますし、ここも工務店の訴求ポイントになると思っています。


こうした工務店ならではのアピールと実践で大手ハウスメーカーなどと差異化を図りながら、ストック時代循環型時代の家づくりの価値観を訴えていく。そしてメンテナンスやリノベーションなどをビジネス化していく。

こうしたことが、工務店の長期優良住宅普及促進法案対応だと考えていますが、どうでしょうか。新建ハウジングでもこのあたりを記事の柱にすえて追いかけていくつもりです。
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2008年03月19日

長期優良住宅普及促進法案、雑感

最近、「長期優良住宅普及促進法案」(200年住宅構想)について追いかけています。そのなかで難しいな、と感じているのは、法律や仕組みよりも、思想的な部分、価値観的なものです。

ひとつは、住宅は個人資産である、という思想。

もうひとつは、新しいものに価値を見出すという思想。

思想と呼んでいいかわかりませんが、日本に真の長寿命住宅が根付き、それらが流通しながら長く使われるには、ここを乗り越える必要があるな、と考えています(もうひとつのハードルは土地至上主義という日本の不動産の現状で、ここはまた書きたいと思います)。


たとえばですが、国として本気で長期優良住宅をあたり前にしようとするならば、今回のような任意型(非強制法)ではなく、基準法などで義務化してしまう(強制法)という選択肢もありました。でも、そういう発想は国になかったわけです。

その根底には、住宅は個人資産であるためそこに強制法的に国が義務付けをするのは最低限に留め、市場原理を活用したい、という国の基本姿勢があるように思います。


そもそも国は戦後、住宅の量に関しては産業振興とあいまって責任を持ってきましたが、質に関しては総じて無関心で、むしろ「建てては壊す」を奨励してきたような部分もあります。

そのなかで一貫して住宅は個人資産という思想を貫いていましたので、街並みや幅広い意味での住環境の整備はないがしろにされ、また大規模災害の時にも国の資金を住宅自体に投入することをしませんでした。

逆に住宅は社会資産でもあるという考え方に立っていれば、もっと質や住環境整備に関して法的に強制できたはずです。

ようやく住生活基本法が制定され、また災害住宅への国の補助も道が開かれましたが、時すでに遅しじゃないかな、という気もします。

いまから、質の高い「優良」な住宅を「長期」にわたって使うよう転換を図るなら、国が明確に、住宅は個人資産であると同時に社会資産だ、という発想に立って制度運営をしなければ国民、そして業界の思想というか価値観はなかなか変らない。個人的にはそう思っていますし、その意味で任意法として出てきた今回の長期優良住宅普及促進法案はどうなのかな、とも思います。

根本的な思想、価値観の部分―住宅は個人資産であると同時に社会資産であるという点を根付かせることができなければ、なかなか長く使いたい・残したいと思えるような家づくり・街づくりも進まないでしょうし、流通をある程度前提とした家づくりも進まないでしょう。結局は、単なる大手に有利な需要促進策で終わる可能性もある、と見ています。

ただ、新建ハウジングでは、「変えよう!ニッポンの家づくり」というポリシーに沿って、長寿命のエコハウスを「あたり前」にとくどいくらい書き続けていますし、住宅の財産化についても触れてきました。内容はどうあれ、長期優良住宅普及促進法案はもうスタートするわけですから、ニッポンの家づくりを変えるきっかけとできるよう、そのための「活用法」と思想・価値観的な部分についてくどいくらい書いていきたいと思っています。
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2007年12月30日

雑感、今日の問題に対応するには昨日を捨てる必要

結局30日まで仕事をしている。ただ、デザイナーさんも今日から休みに入っているので、年明けのデザイナーさんの仕事始めまでに原稿とレイアウトをそろえておけばいい。こう思うと気は楽になるが、ペースダウンしてしまい、結局大量の原稿が年越しとなってしまった。


毎年この調子で年末進行・新年進行に追われるので、1年を振り返り反省をして新たな気持ちで新年を、ということをやらずに来てしまっている。

あまり振り返らない性格なのだが、それでも人間関係やビジネスのこと、悩みはそれなりにあるので、年末年始にその改善・解決ができればと思うが、結局階段を昇れずフラットなまま年だけとっていく。特にコミュニケーション能力が欠如しているので、そこをなんとか、と思うが、なんともだ。


問題解決を考えるとき、気をつけていてもなかなかできないのが、「昨日」にしばられない、ということだ。

「昨日」の問題意識や「昨日」の常識に縛られていると、視野が狭くなり、「今日」の問題解決のための思考や議論ができない。逆に言えば、「昨日」の問題意識や常識を捨てない限り、「今日」の問題は解決できないということだ。

でもこれが難しい。たとえば僕らの場合だと、これまでの住宅産業の問題意識やメディアの常識をもとに、いま起きている問題に向き合っても、ズレたり上滑りしてしまう。前に進まないことも多い。

そもそも「昨日」と「今日」の境界線も難しいのだけれど、常に新陳代謝を心がけたいと、特番ばかりのテレビを見ながら思った。
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2007年12月14日

雑感、法の網は粗い方がいい

年末の特集に向けて記事を山のように書く。書いていくなかで、いろんなことが頭に浮かぶ。そうしたことを書き留めておくのもブログという媒体なのだろうと思う。

法律をウォッチし声をあげる
法改正や新法新設が行われる前後は、関連する企業・人の関心が集中する。
僕らメディアもそこに乗る。ニーズがあるからだ。ただ、売れる情報は「○○法対応徹底解説」などのノウハウものが中心だ。法律をどう考えるべきかとか、この法律案はこう変えていこうみたいなことを書いてもあんまり反響もないし、売れない。
でも、改正前はこうした情報を出していくことが大事だと思った。ウォッチし、声をあげていかなければ、何も変わらない。法律ができたあとに文句をいい、あたふたと対応する。この繰り返しはもうやめにしないとだめだ。さもなければ、官だけに都合のいい法律だけが増えていきかねない。
叩くのではなく、ウォッチし、声をあげ、必要であれば冷静に批判を
することだ。

くぐれない網はない
建築関連でも法改正が続いているが、どんなに法の網の目を細かくしても、くぐろうとするものはそれをくぐるテクニックを開発する。だから法の網は粗い方がいい。出口でしっかりチェックすればいいだけだ。でも入り口の網だけ細かくして、出口がざるの法律が多いように見える。
また、細かくするほど、官民双方にエネルギーが必要になる。そのエネルギーはムダであるばかりか、官はエネルギーがさらに必要だからとうまくその機にOBの皆さんのお仕事を増やす。

政治は利益を実現するもの
政治は正義ではなく利益を実現するものだと再確認した。そもそも政治家は誰かの利益の代弁者として選挙で選ばれるのだから、あたり前だった。そもそも正義ってなんだろう、とも思った。
選挙が近いので、来年度予算では地方に大盤振る舞いが行われるだろう。だが、都会には顔をしかめる人がいても、地方にはいない。
予算も、国民の直接的なメリットのために使われるならまだいいが、けっこうな割合が官がらみの法人や官の仕事で食っている企業に、さして意味もなく成果も検証されない名目で流れていく。ほんの一部でもそれを明らかにしてやろうとも思うけれど、それも含めて日本の経済システムの一部になってしまっているので、どうしようもないかな、とも思う。
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2007年11月22日

消費税の行方と住宅産業、雑感

消費税の行方に注目が集まっている。

政府の税制調査会と自民党の財政改革研究会が、答申や中間報告をとりまとめた。だが、どちらも、実施時期や税率を明確にしていない。研究会の報告に「10年代半ばをめどに、年金・医療・介護・少子化対策に必要な公費負担の規模は、少なくとも現行の消費税10%程度に相当」に書かれているだけだ。

住宅産業にとって消費税は大きな関心事だ。どうしても前回引き上げ前の駆け込みのバタバタと引き上げ後の受注落ち込みが頭をよぎる。ただでさえ注文住宅を中心に冷え込みが顕著になっているなかで、段階的にでも引き上げが行われれば、住宅市場はさらに混乱するだろう。「業界関係者」としては引き上げが避けられれば、ということになる。


だが、個人的には政治家の選挙がらみのあいまいな物言いにはうんざりする。もちろん歳出削減は徹底すべきだが、財源の手当てができなければ、年金の将来はおぼつかない。もう国債頼りも限界だ。いまこそ、ごまかしのない議論をするときだろう。

感覚は、年金をもらっている・もうすぐもらえる世代と、若い世代では大きく異なるだろう。若い世代の相当数は、ごまかしのない説明があれば、将来の安心確保のためなら増税もやむなし、と考えるのではないか(一方で年金あきらめ・払いたくない派も相当数いそうだが)。

だが、政治家が自分の政治生命を第一に考え、ごまかし・先延ばしに終始しているように見えるから、政治に期待もできないし、参加にも積極的になれないように見える。


住宅産業もこうした空気を読んで消費税問題を考える必要があるように思う。むしろ、住宅産業が貢献できるとすれば、住宅の財産価値を高めて、住宅をもうひとつの年金とすることだろう。現実的には厳しい問題が山積だが、そういう希望がもてれば住宅をもっと安心して買えるようになる。消費も活性化するのではないか。
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2007年11月06日

東洋ゴムの不燃性能試験不正、雑感

東洋ゴム工業が断熱パネルの不燃性能試験で不正[新建ハウジングWEB]という記事から。

国土交通省は11月5日、東洋ゴム工業製の硬質ウレタン製両面金属面材断熱パネルの不燃性能試験などで不正があったと発表した。同省は、不正があった構造方法6件の大臣認定について同日付けで取り消すなどの対応をとった。該当する建材が使われた建築物は、東洋ゴム工業によるとすくなくとも176件。

不正があったのは、硬質ウレタンを金属板で両面から挟んだ断熱パネルで、試験体の芯材に、申請とは異なる不燃剤を混入したパネルなどを使って試験を受けた。

この不正受験によって認定を受けた構造方法などは、認定番号NM−0769、QM−9763、QM−9764、QF045BE−9194、QF045BE−9195、PC030NE−9165の6件。


追取材ができていないので、雑感のみ記しておきたい。


先日ニチアスの試験偽装を受けてニチアスが耐火性能を偽装というエントリを書き、今後他社の偽装が明るみに出る可能性を指摘したが、第二弾は東洋ゴム工業だった。歴代担当部長らは15年前から性能試験の偽装を把握し、代々申し送りしていたという。新建ハウジングでもこれまで同社の情報を掲載してきただけに残念でならない。

ニチアスもそうだが東洋ゴム工業も大企業だ。大企業病といった紋切り型で切りたくはないが、部門で起きた問題を全社の問題として迅速に真摯に対応するという点で組織が正常に機能しているのか、疑問を感じずにおれない。

東洋ゴム工業は断熱パネル事業からの撤退も検討、主力のタイヤ事業のブランド崩壊を防ぎたい考えのようだ。ブランド崩壊を食い止められるかどうかは、今後の対応にかかっている。嘘に嘘を重ねるような対応だけはやめてほしい。


大臣認定というシステムにも考えるべき点がある。今回の不正は「芯材に申請とは異なる不燃材を混入したパネルを使った」(=生産品と違うもので性能評価を受けた)というものだが、このチェック方法についてなど疑問も多い。もしかして同様の方法で他社も、などと考え始めると少しうすら寒くなってくる。

また国土交通省は今後大臣認定制度の見直しに入ると見られるが、前回のエントリでも指摘したように、その過程で新たな問題が発覚する可能性も否定できない。

そして、こうしたゴタゴタの中でただでさえ基準法改正で滞っている新製品の大臣認定作業はさらに滞るだろう。感覚で言うが、新製品を投入できなくて困るメーカーなども出てくるのではないか。

これら以外にもたくさん考えるべき点がある大臣認定制度だが、今後新建ハウジングでも追っていきたい。
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2007年10月26日

雑感、給料と工務店の客層

地方に取材に行くと、消費の弱さが目に付く。もちろん東京でも消費は多極化しているのだろうが、「景気いいな」という場面に出会うことも少なくない。が、地方(愛知は別)ではそんな場面を見ることはほとんどない。そのなかで工務店という業を持続させていくのは並大抵ではないな、と思う。

地方の工務店さんに客層を聞くと、ローコスト系以外ほぼ全社から「公務員が多いですね」という答えが返ってくる。

以前は、エコハウスや職人の木組みの家など、明確なポリシーに反応するのは公務員、特に教師みたいな人が多いのだろうな、と解釈していた。だが最近は、どうもまずお金の問題がありそうだ、と思っている。


直近の例で言えば、総務省の調査によると、清掃職員など現業7業種の地方公務員の給与が、民間企業の同じ職種の平均月給に比べて1・4〜1・8倍高かったという。ボーナスや諸手当を含めた年収が民間の2倍を超す高収入となっている例もあったとのこと。

わかりやすい例としてあえて挙げると、守衛の都道府県平均月給は42.4万円だった。もちろんボーナスなどもきちんとつく。民間警備会社でこんなにもらえる会社はないだろう。ボーナスにしても業績によって上下がある。さらに言ってしまえば、工務店の社員の月給はどうか。


もちろん公務員は年功序列で給与が上がっていくため、平均値ををとると給与額は高く出る。だからこうした数字だけぱっと見て、というのはあれなのだけれども、地方に行けば行くほど民間企業との生涯収入の格差が大きくなっているのは確かだろう。やはり公務員は、工務店にとっていいお客さんなのだ。


こうしたことも含めて、工務店は自らの「理想の顧客」をもっときちんと見極める必要があるな、と思っている。


また、もっと大きな視点を雑感レベルでいうと、格差が叫ばれていて政治的な争点にもなっているが、格差是正よりも全体の所得水準を引き上げるための政策―つまりは成長率を引き上げる政策が必要なように思う。そのうえで、お金持ちにもっとお金を使ってもらえるようにする。

感覚としては、格差是正の名の元にバラマキ政策が行われても短期的には建設業をはじめ恩恵があるのかもしれないが、長期的にはそれでは地方の経済はちょっともたないのではないか、と思う。
posted by miura at 09:39| Comment(4) | TrackBack(1) | 日々雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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