住宅専門紙「新建ハウジング」の発行人(社長)が、
住宅ビジネスのヒント・トピックをつづります。


2014年04月13日

里山資本主義・コミュニティデザインと地域のつくり手

 地域密着―地域のつくり手が地域とどう関わるかは、地域のつくり手にとって古くて新しい課題です。


里山資本主義.JPG

里山資本主義×地域のつくり手
 
 キーワードとしてはたとえば、エコノミストの藻谷浩介氏が提唱する「里山資本主義」があります。

 「奪い取る」「未来・次世代から搾取する」従来型資本主義の限界を指摘、地域の資源とコミュニティの価値・豊かさを「里山」というキーワードでくくり、これらを資本に自給自足・知足(足るを知る)+循環型の経済へと転換することを説くもの。
 いろいろ言われていますが、基本的な方向性は間違っていないと思います。

 地域のつくり手が取り組む「地域材による地域型住宅」も里山資本主義と同一線上にある取り組み。より視点と業域を広げ、よりつながることで、地域のつくり手は木を核とする里山資本主義の主役となれるはずです。


イベント.jpg

コミュニティデザイン×地域のつくり手

 「コミュニティデザイン」というキーワードもあります。
 
 地域の課題に、人と人のつながりであるコミュニティという観点から解決に貢献しようとする手法です。
 地域の人々の相談にのりながら解決策を一緒に考え、活動をサポートしていける人材=「コミュニティデザイナー」の必要性を説き自らも実践する山崎亮氏(studio-L代表)の取り組みで注目を集めています。

 地域のつくり手の場合、住まいと暮らしを通して地域のコミュニティに貢献できますし、とくに工務店の場合、すでにオーナー(OB)というコミュニティを持ち、またカルチャー教室や感謝祭などのイベントを通じて地域のコミュニティと関わっています。そしてこのつながりをもっと地域の課題解決に活用することもできるでしょう。
 
 そう考えると、地域のつくり手は「コミュニティデザイナー」として大きなポテンシャルを持っていると言えます。


いま問われていること

 今後地域のつくり手には、地域でコミュニティをつくり、業域を建築から少し広げ、地域課題の解決に貢献することが一層問われてくるでしょう。

 これは古くて新しい「三方良し」(顧客+社会+自社の利を共に目指す)のかたちです。幅広い顧客に新しい価値を提供することで地域の衰退を食い止め地域とともに事業を継続する。

 こうした仕事のかたちを「楽しい」「充実感がある」と選ぶ人が若年層を中心に増えていて、地域に帰り、また移り住み、小商いを立ち上げ、つながり始めている。地域が変わり始めている。
 
 地域のつくり手の未来像が見えてきたように思っています。
 

 こんなテーマを考えるフォーラムを開催します。
 4月23日「コミュニティビルダーフォーラム」。基調講演には山崎亮さんをお迎えします。

 よろしければご参加ください。
 
posted by miura at 21:06| 住宅ビジネスのヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

前川國男のプレハブ住宅「プレモス」

前川國男自邸内観

前川國男自邸


[2011年の記事の再掲です]
記者になったとき教科書として手に取った「昭和住宅物語」(藤森照信)は定期的に読み返す愛読書のひとつです。
先日も読み返していたら、前川國男の記述のところに気になる一説を見つけました。


前川が「プレモス」と呼ぶ木造の量産住宅に取り組み、結果として失敗したことは、前川の建築をたどったことのある人にはよく知られた事実だと思います。
プレモスは床壁をパネル化した木の小さな箱で、小さな家のプロダクトと言えるかもしれません。
もの自体は終戦直後(昭和21年)ということもあり、前川らしい魅力はそれほどなく代替住宅的に使われたようですが、1000棟を生産して役割を終えました。


藤森氏は「昭和住宅物語」のなかでこう書いています。
(前略)プレモスが、前川國男というモダニズムのエースにより手掛けられながら結局失敗に終わった、ということろに僕は感慨を禁じえない。
なぜかと言うと、戦後の時間を一貫して、日本のモダニズム建築家の中には、「量としての住宅に取り組まなくてはならない」という、国民のために働く建築家としての使命感があり、また「住宅を工業生産のラインに乗せてみたい」という工業化の時代に生きる建築家としての夢があり、この使命感と夢が結合すると「プレハブ住宅の開発」という行動に向かい、そしてなぜか必ず失敗する。
国民のために働く建築家としての使命感。現在の建築家、設計者の使命感はなんでしょうか、あるのでしょうか、と偉そうに思ったりします。


このプレモスはニッサンを一代で築いた鮎川義介が関わったことでも面白いプロジェクトでした(最後は決裂したそうですが)。この点についても藤森はこう書いています。
モダニズムという建築思想はそのスタートのときからいつも<車>というものをヒリヒリするくらいに意識してきた。<建築と技術>というテーマを建てるときは常に車のことが頭にあった。飛行機でも船でもなく、「動く居室」的な性格を持つ車こそもっとも建築に近いと考えられながら、しかし一方、その製造方法が建築と違って徹底的に工業化されているという点が、建築家をしてますます車にのめり込ませてきた。



さらにこう続けます。なるほど、と思う部分です。
「車のように住宅をつくりたい」
この夢を一度も見なかったモダニストは少ないと思う。プレハブ住宅の開発に取り組んだ建築家は、大げさに言うと、みな車に片想いし、結局、結ばれることなく恋に破れながらバスユニットとかなんとかを手掛けて、自分を慰めてきたのだった。



社会的使命感(「量」ではない違う使命感―僕はコストパフォーマンス向上だと思っています)と夢は、まさにいま結合する可能性があるのではないか、と考えています。

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